記号論とコンセプト

今回は、ソシュールの記号論についてお話しします。

フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure、1857年11月26日 – 1913年2月22日)は、「近代言語学の父」といわれているスイス言語学者、言語哲学者であり、今回取り上げる記号論を基礎づけた人です。

もちろん、言語学者でも哲学者でもない一介の企画屋が解釈した記号論なので、これから先は専門家の先生からしたら眉を顰めるようないい加減な話もあろうかと思います。

それでも、「記号論」を知り、取り入れたことで、私の商売は好転したことも事実なので、そこは譲らずお話ししたいと思います。

コンセプトとは何か?

商売には、コンセプトが付き物です。でも、「コンセプト」って、一体どういう意味なのでしょう? 「コンセプト」の本当の意味を答えられる人って、どれくらいいるのでしょう?

私は、コンセプトの定義を「マーケティングの3要素」に求めています。

「何を」「誰に」「どうやって」という3つの 要素をどう組み合わせるのか、というのがマーケティングの課題です。

これをそのままコンセプトの定義としてとらえています。 つまり、コンセプトというのは、

(1)どんな価値を伝えるのか?(=何を)
(2)どんな人に伝えるのか?(=誰に)
(3)どのように伝えるのか(=どうやって)

この3つの要素の組み合わせのこと言っているんだ、と割り切ってしまうととてもわかりやすいんです。


伝えるべき価値(=何)を明確にすることで、その価値を最も伝え たい人(=誰)に伝えることができます。

それが明確になれば、自ずと「どうやって伝えるべきか」という方法論も定まってきます。

このように、3つの要素の組み合わせを検討することがコンセプトメイキングで あるとしても、それでは一体『価値』ってなあに?という疑問が新 たに生まれてきます。

価値とは何か?

どんな「価値」を伝えるのか?この部分が明確にならないから、その価値を最も受け入れるべき人って誰なのか?もハッキリしないし、どのように伝えたらいいか?も定まらず、結局、コンセプト自体が破綻してしまうのです。

つまり、「価値」そのものがわかっていないと、コンセプトには至らないということになります。

では、「価値」って何でしょうか?

広辞苑によると、「価値」は、物事の役に立つ性質・程度、ねうち、効用とあります。確かにそうなのかもしれませんが、今ひとつ分かったような分からないような感じです。

そこで登場するのが、ソシュールの記号論です。

ソシュールは、「形態」と『意味』の両方を持つ言語を【記号】と呼び、それに価値があると言い切りました。


つまり、価値=形+意味です

形態というのは『容器』のことで、意味というのは「中身」のことです。容器は形のあるものなので、イメージすることができます。

たとえば、「ビジネス入門者向けの教材」と言うと、何となくイメージできますよね?

初歩的なことから順を追って、ビジネスのつくり方や集客・セースルに至るプロセスをわかりやすく教えてくれるのだろう、というイメージをもちます。

だから、これは『容器』です。

では、その『容器』の中に、どんな中身(=何)を入れますか?というのが、価値の記号論的解釈です。

「初心者向けのわかりやすい解説書が中身でしょう?」というのではダメなんです。 なぜなら、それは中身ではなく『容器』だからです。

いまどき初心者向けのわかりやすい教材なんて、山ほど出ています。だから、『容器』なのです。 なのに、そこに特別な意味(=中身)があるかのように触れ回るのは非常にまずいんです。

たとえば、コーラの中身を全部飲みきったあとにペットボトルだけを手渡しして「ぜひ私の価値を受け取ってください」 なんて誰かに言えますか?という話です。

一方、コーラーをコップに注ぎ込み、そこにライムの果汁を絞り出して、「これがウチのコーラです」と言ってお客さん に差し出す。お客さんは『コーラ』というイメージ(=形)でゴクッと飲み干しますが、その「中身」はコーラであって、コーラでない。

いや、たしかにコーラなんだけど、いつものコーラとはちょっと違う。こっちのコーラのほうがすっきりしていて美味しいかも?毎日飲みたいというほどではないが、3日に1度くらいは飲みたいかも?いやいや、この新種のコーラは、洋食に良く合うかも?

なので、晩飯が洋食のときは欠かさず飲んでみるのもいいかも?

これが、その新種のコーラ(=名付けてコロナ・コーラ?)の価値です。

このように、価値とは必然的にユニークなものとなります。すべての人にとってではないかもしれないけれど、「誰か」にとっては、今までの『容器』よりも優れた「中身」を備え ていると認識されるものとなります。


✔その価値とは一体何なのか?(=何を)

✔それは一体誰にとって役に立つのか?(=誰に)

✔それをどんなふうに届けたらよりよくその価値をわかってもらえるか?(=どうやって)

こうしたことを検討していくことで、自ずと商品・サービスのコンセプトが見つかります。

こんなふうに、記号論というのは、価値創出論といっても良いくらいのオリジナリティあふれるコンセプトメイキングに 直結する、めちゃくちゃ使える思考法なんです。

価値=形+意味である

ソシュールは、「形態」と『意味』の両方を持つ言語を【記号】と呼び、それに価値があると 説明しました。 価値=形+意味です。

形態というのは『容器』のことで、意味というのは「中身」のことですね。『容器』の中に、何(どんな「中身」)を入れますか?というのが、価値の記号論的解釈です。

ふーん・・・で終わってしまいそうな話ですが、これ(価値=形+意味)は、とんでもない思考の補助線(※こちら参照)です。

なぜなら、思考の補助線は価値を生み出すための道具として存在(※後日詳しくお話します)しますが、記号論はその価値を「形」と「意味」だけで構成される超シンプルなものであることをハッキリさせてくれているからです。

つまり、「どうしたら新しい価値を生み出せるのか?」という非常に難しい問いに対して、「形を変えるか」「意味を変 えるか」「両方を変えるか」の三択問題にすぎないことを教えてくれているということです。

びっくりしませんか?この3つのパターンだけで、どんどん新しい価値が生み出せるなんてちょっと嬉しくなってきますよね。

形を変えて価値を生み出す。

形を変えて価値を生み出す、という一つ目のパターンについては、ストアーズ.jpを例に説明します。 https://stores.jp/

いわゆるネットショップを手軽に運営できるサービスです。ちなみに私が関わっている店はこちらです。 https://dailycontents.shop/

「ネットショップ」というのは、一つの形です。その意味は、何らかの商品・サービスを必要としていつ人に対して、何らかの商品・サービスを陳列して提案する、といったことになります。

ネットショップという形をネットショップという意味のまま運営するだけでは、そこにはネットショップ以上の価値をもたらすことはできません。

ところが、ネットショップを「ブログ」として使うようにしたら、どうなるでしょうか?

たとえば、stores.jpにはネットショップとしての基本機能以外に、ブログのような機能が付属しています。→このような機能です。

私が関わっているネットショップではまだまだブログとしては中途半端な感じですが、まさにブログとして、ここにどんどん記事を投稿していったら、その形はネットショップ以上に「ブログ」として認められることになるでしょう。

毎日ネットショップをブログとして使うようになると、その記事の中からさままざまな商品企画案が生まれるようになるでしょう。

こうして生まれた商品案を実際に商品化し、今度はネットショップ本来の機能を使って、そのブログのようなネットショップで売りに出すのです。

つまり、(1)まずネットショプという形を崩してブログの体裁(=形)を作り出す。(2)そこで生み出された企画案を商品化しネットショップ本来の機能に戻して販売する、ということです。

これはどういうことなのか?というと、一つのネットショップで、商品開発も商品販売も全部行ってしまう、という『意味』に切り替わったことを意味しています。

切り替わった意味には、元の価値とは違う価値が宿るということです。

意味を変えて価値を生み出す

発案千太郎のアイデア1000本ノック(活動停止中)というtwitterがあります。 https://twitter.com/idea1000k

なぜ、彼のツイートが活動を止めているのかというと、一つの目的を達成してしまったからです。

その目的というのが、『舞台裏マーケティング』(※こちらの店舗に陳列されています)という教材コンテンツです。この商品の核となる事例を作るためにツイートしていたということです。

それが、ソシュールの記号論と何の関係があるのか意味不明かもしれませんが、「価値=形+意味」を説明するときに、 真っ先に取り上げる事例がこれなのです。

アイデア1000本ノックとは、表向きは、千太郎が「アイデア1000本つぶやきますよ」と言っているツイッターで すが、その意図は、新しいKindle本の編集方法を提案することです。

なぜなら、それこそまさに、「舞台裏マーケティング」のネタの一つだからです。

ツイッターの価値は、誰でも簡単に140文字でツイートできる投稿装置という形態と、その日の気分や普段考えている ことをツイートすることで他の誰かとつながれる、という意味があります。

そして、アイデア1000本ノックは、ツイッターをそのまま利用しているわけですから、「形」は固定であり、「意 味」のほうを変えているパターンです。

簡単に言うと、ツイッターをTwitterとして利用しないということです。別の目的で、ツイッターという形を利用するということです。千太郎のケースでは、ツイッターを書籍編集のためのメモ帳、ネタ出し帳として活用しています。

通常、書籍の下書きは、メモ帳やWORDファイルを使用します。また、書籍のネタとなるアイデアは、日記やメモ帳を使用します。日常で思いついたことを忘れない様にメモ帳に書き込む。こうしたネタをもとにWORD原稿に起こしていく作業です。

このような作業を続けていくと、自分のネタの中でどのネタが読者にとって関心が高く、どのネタが興味を持たれないの か知りたくなることがあります。そこで、作業の途中で、誰かにヒアリングしてみたくなったりします。

私の場合は、メルマガを配信していますから、メルマガでいくつかのネタを披露して、一番面白いと思うネタにクリック してもらえば、すぐに面白いネタ、つまらないネタを事前に把握することができます。

でも、みんながみんなメルマガをやっているわけではないし、誰でも気軽にヒアリングできる媒体って何だろう?と考え ると、お手軽さでいったら、ツイッターあたりが適当なんじゃないか?と思いついたのが発案千太郎というわけです。

まず、相性の良さそうな人のツイートに「いいね」を繰り返していって、これは!という人にはフォローをしていく。でもって、自分自身が日ごろ思っていることをツイッターを使ってネタ出ししていって、反応があるかどうか観察していく。

当然、最初のうちは何も反応がなくて当たり前なんですけど、少しずつ、「いいね返し」「フォロー返し」してくれた優し い人から、リプをもらったり、リツイートされたりする。

こうして、反応のあるネタ、いまいちなネタが何となくつかめるようになっていきます。

あれ?でも、これって、いちいち普段メモ帳などにネタ出しする意味ないじゃないか?ツイッターでダイレクトにネタ出しする習慣をもてばいいんじゃないか?と気づくのは秒です。

それだけではなく、ネタから書籍の原稿にもっていく作業についても、「140文字」という字数制限を上手く使えば かえって短文で、まとまりのある読みやすい原稿になるんじゃないか?

というわけで、ネタ出しだけでなく、ツイッター だけで書籍原稿の下書きを完了してしまったほうが早い、ということにもすぐ気づきます。

ネタ出しから原稿の下書きまでTwitterオンリーで完結します。このことは、ツイッターという「形」に、Kindle書籍の編集ツールという新しい「意味」を与えたことになります。

実際に編集ツールとしてのツイッターを使い込んでみると、これが本当に良く出来ていて、#(ハッシュタグ)を使った 関連情報の検索や、情報源になるようなツイッターをリストで一元管理、あるいは、モーメント機能を使えば、日ごろの ネタ出し(ツイート)を章単位のイメージでまとめて閲覧することも可能となったり・・・。

とにかく、書籍編集ツールとしてめちゃくちゃ使い勝手がいいんですね。ツイッター一つでインターネット接続環境さえあれば、どんどん書籍の下書きを書き溜めることができてしまえるんじゃ ないかと気づきます。

もちろん、最終的には、ツイッターで書き溜めた下書きをテキストファイルに移行し、Kindleの登録窓口受け付けるファイル形式 に変換してUPするわけですが、その手前の9割程度の作業は、ほぼツイッターだけで完結します。

これは、「価値」といってもいいですよね?

(形)ツイッター + (意味)つぶやきを共有する・・・という元々の価値が、形を変えず、意味だけを変えて、このようにまったく別の新しい価値を生み出します。

記号論、おそるべしです。

形を変えずに新たな価値を生み出す

有名な事例としては、食器乾燥機があります。形は食器乾燥機。でも食器を洗うという用途以外に何か意味を持てないものか?と考えた結果、「プラモデルのドライブース」という価値が認められました。

今や、プラモデル愛好家にとっては、山善の食器乾燥機はドライブース以外の何ものでもありません(言い過ぎか❓笑)。

こうした「用途変更」の事例はたくさんあります。

たとえば、乾燥肌の人が冬場に愛用するハンドクリーム。その「ハンドクリーム」という形のままで、静電気除去クリー ムという意味付けをすれば、そこに新しい価値が認められます。

また、ヘアドライヤーもそのままの形で、肩こり改善の温風器に変わります

私なども長年肩こりに悩まされ続けた者の一人ですが、夜寝る前に風呂にゆっくり浸かり、ドライヤーで髪を乾かした後 に両肩の周囲にも温風をあてる。こうした習慣を続けていたところ、気になるほどの肩こりはなくなりました。

おそらく、温風効果に加え、両肩の周囲にまんべんなく温風をかざすため左右の腕を交互に回したりするので、ストレッチ効果もあるのではないかと思います。

形を変えて新たな価値を生み出す

そのままの形で意味付けが変わり価値が変わったものの中には、失敗から生まれたものもたくさんあります。

たとえば、ポストイットカードは、もともとは接着剤の試験から生まれたものです。ところが、どうしてもすぐに剥がれてしまい、接着剤としては売り物にならない。

そんなとき、試験用の紙片を手にしたスタッフが、「これは本の栞に使えるのではないか?」ということに気づきます。

接着剤を接着剤のまま売りだすというのではなくて、接着剤の試験用の紙片という形に「栞」という意味づけをしたとこ ろで新しい価値が生まれたわけです。

しかし、話はここで終りません。「すぐに剥がれる接着剤を一辺に塗り込んだ紙片」というのは、その用途のぶんだけ重宝しそうだ、ということがわかったからです。

つまり、「都合よく剥がせる」という意味を変えることなく、用途に合わせていろんなタイプの紙片を使い分ければよい という発想で、形を変えて生まれたのが、様々な種類のポストイットカードという製品です。

まず、(1)形を変えずに意味だけを変えて用途変更する。そのあとから、(2)形を変え、意味づけを強化するという ケースもあるということです。

以上、今回は記号論を取り上げてみましたが、かなり商売に使えると思いませんか?

世の中はアイデアに溢れています。そんなアイデアを「形+意味」に分解してみると、価値というものの本質が見えてきそうになりませんか?

ぜひ、目にすることの出来るさまざまな商品やアイデアを「形」と「意味」で読み解いてみてください。読み解いたら、形や意味を変えて、新たな価値をイメージしてみてください。

たとえば、トイレに入ったらトイレットペーパーを切らしていた。芯を立ててみたら花瓶や筆立てに見えてきた。これに近い経験は誰しもあるかと思います。

そこから、「もしかして、トイレットペーパーの芯にも、本来の意味とはまったく異なる別の意味を持たせることもできるのではないか?」と発想することができるようになります。

トイレットペーパーの芯に何らかのメッセージが刷り込まれていてもいいですよね?「ペーパー芯占いとか笑」

日常レベルで目にしたモノを片っ端から「形」「意味」で読み解く、こんなことを習慣にすると、驚くほどたくさんの新たな価値を見つけ出すことができます。

そのときの思考は、企画を立案しているときの思考ときわめて相性が良く、自分でも信じられないような企画コンセプトがどんどん思いついたりするものです。

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