企画を作ろう!などと頻繁に使われる『企画』という言葉。
でも、そもそも企画とは一体何でしょうか?
結論から言うと、企画とは「新奇性かつ実現可能性のある思いつきを形にしたもの」のことです。
企画(形)=思いつき×新奇性×実現可能性
です。
良い企画が作れるか否かは、まず第一に何かを思いつけるか否かに関わってきます。
人間は毎日何かを思いつきながら生きています。
なので、企画を作れない人は一人もいないということです。
ただし、「思いつき」をそのままの状態にしておいただけでは、通常は自分以外の誰にも理解してもらえません。
そこで、「思いつき」を『企画』と呼ぶに相応しい体裁(形)に整えなければならないのです。
では、単なる思いつきレベルのものを、誰もが『企画』と認めるに相応しい状態にするにはどうしたらいいでしょう?
答えは、「思いつき」に(1)新奇性、(2)実現可能性という2つのフィルターでふるいにかければよいのです。
その思いつきは、単なる思いつきではなく、(1)新奇性のある思いつきといえるかどうか?これが一つ目のフィルターです。
次に、新奇性のある思いつきが、自分自身の手で、あるいは誰かの協力を得ることで、(2)実現可能なものになり得るか?これが、二つ目のフィルターです。
つまり、企画というのは、思いつきの中でも(1)新奇性のある思いつきであり、しかも、(2)実現可能性のある思いつきである必要があります。
∴企画(形)=思いつき×新奇性×実現可能性
このことをまずはしっかり押さえておくと良いでしょう。
企画とは自分自身 である
企画とは新奇性、実現可能性のある思い思い付きを形にしたもの、一応このように定義づけはできますが、それだけで企画が作れるのか?といえばNOです。
人間が一日で何かを思いつく量というのは半端ないですし、そのすべてに新奇性、実現可能性のフィルターでふるにかけるというのも非現実的です。
そこで、「どの思いつきから検討しようか?」となるわけですが、このときの判断基準は、自分自身が『面白い』と思える「思いつき」から入るのがごく自然な流れです。
実際、自分自身が面白いと思わない思いつきなんて、そうそう思いつくわけがありません。「これってひよっとして・・・」「なんとかモノになるかも・・・」という思いつきというのは、普通はその人自身の感性によって思いつくものです。
さらに言うと、その人が「何を面白いと感じるか」によって左右されます。
そのような思いつきの中でも、自分自身が心底「面白い」と感じたものがあれば、それが企画作りの出発点として十分でしょう。
その意味では、企画とは、面白いと思える思いつきを新奇性と実現可能性でふるいにかけたもの、ということになります。
∴企画(形)=自分が面白いと思える思いつき×新奇性×実現可能性
何が面白いと思えるのか?というのは、人それぞれです。自分がいくら面白いと思っても、みんなが皆「面白い」と思ってくれる保証はありません。
けれど、自分が心底「面白い!」と思った思いつきには、必ず同じように「面白い!」と感じてくれる誰かが居ます。
なので、企画の担い手は、まずは自分自身が心から面白い!と思える思いつきを自分と同じ感性の人に向けて量産すべきです。
なぜなら、他人にとっての面白さを起点にどんどん何かを思いつけるほど、人間の脳は都合よく出来ていないからです。
だとしたら、まずは、自分自身の面白さを基準に思いつきの量を増やしていくべきではないでしょうか。
このように考えてみると、企画というのは『自分そのもの』だと思えてきませんか?
さらには、企画というのは「人間そのもの」ではないかと思えてきませんか?
「人間とは感情の動物である」とはよく言ったもんで、たしかに人間を動かす根拠が喜怒哀楽にあることは疑いようがありません。
また、「企画を作る」という行為は、他人を動かす前に自分自身を動かす、といった側面が否応なくあります。
そのうえで、出来上がった企画を、こんどは他人に広げていくわけです。
そう考えれば、企画は喜怒哀楽をベースにしたほうがはるかに作りやすく、広めやすいというのは明らかです。
喜怒哀楽の中でも、日常レベルで思いつきの量を確保しやすいのは、やはり「喜べること」「楽しめること」でしょう。
もちろん、今現在何かに対して尋常ならざる怒りや哀しみがあるのだとすれば、そのことを起点に思いついたアイデアを検討することで素晴らしい企画が生まれる可能性があります。
しかし、これは一般的にはあまりおすすめできるアプローチではありません。
なぜなら、「楽しいこと」「面白いこと」は、どんどん無限ループのように思いつくことができますが、怒りや哀しみをベースに何かを思いつくには限度があるからです。
なので、まずは自分自身が心底「面白いと思えること」を中心において、どんどん思いつきの量を増やしていくのがベターでしょう。
自分自身が面白い!と確信していることを、『企画』というカタチで世の中に訴えていく。
企画屋のやっていることは、単純にそれだけといっても良いのではないでしょうか?
面白さには法則がある
これについては、京都大学化学研究所の上杉志成教授が、まさに「面白い」ことを言っています。
(参照)上杉教授による「おもしろいの法則」http://chemistry.or.jp/opinion/
第一法則「予想外であること」
第二法則「緊張と弛緩があること」
第三法則「全く異なるものがぴったり合わさること」
この3法則を知ったとき、私は大変「面白い!」と思ったものですが、その一番の理由は、化学の大学教授が真剣に「おもしろさ」について研究し、しかも 18 年間も継続してきたという事実についてです。
まさに、教授の行動そのものが、「予想外」であり、大学という教育機関で「おもしろさ」を追究してきたという点では「緊張と弛緩」があり、大学教育とパチンコ、漫才、落語…といった異分野同士の組み合わせという意味では、「全く異質なものがぴったりと合わさっている」ということでもあります。
つまり、面白いの3つの法則をすべて充たしているわけです。
私は、ここに「企画のヒント」があると考えています。
企画とは意外性である
おもしろいの法則(予想外、緊張と弛緩、異分野の合致)を大胆にひと言で表現するとしたら、【意外性】という言葉が一番しっくりくるのではないでしょうか?
第一法則(予想外)は意外性そのものです。
第3法則(異分野の合致)というのも、そもそもくっつき合うはずのない異なる領域のものがくっつくことによって生じる化学反応に対する面白さのことを言っており、これまた意外性そのものです。
残りの「緊張と弛緩」ですが、これとて、小さな子供が運動場でこけても全く面白くも何ともない(=ごく普通のこと)ですが、スピーチをするために大先生が今まさに壇上を闊歩している最中にすっ転んだらメチャクチャ面白い。本来緊張する場面なのに何故か頬が緩んでしまうような出来事が起こる。
このように 緊張と弛緩も意外性の一類型に相違ありません。
なので、企画も「意外性」を追求するのが最も手っ取り早いんです。
日常生活の中で、「あれれ・・・、ちょっと意外なことを思いついちゃった」多い少ないは別にして、このような経験は誰にでもあると思います。
ご自身の思いつきに「意外性」を感じたら、それはもう大きなチャンス到来!と考えてください。
ですが、意外性のある思いつきが、向こうから運よくどんどん転がり込んでくるなんてことは滅多にありません。
なので、「単なる思いつき」を【意外性のある思いつき】へと変換する装置が必要なのです(これについては機会を改めて)
思いつきゼロでも思いつく
企画とは本来、新奇性を伴ったものであり、喜怒哀楽、その中でもとりわけ「喜び」や「楽しさ」に根ざしたものであり、意外性の塊のような存在なのです。
しかも、ちゃんと実現可能性があるからこそ、単なる思いつきではなく、【企画】として広める価値が宿ります。
ところが、おおよその「企画」と銘打たれた『企画もどき』というのは、新奇性もなく、面白さに根ざしているわけでもなく、意外性の欠片もなかったりしており、せいぜいクリアーしているのは実現可能性くらいなものだったりします。
この手の「企画もどき」ばかりが続々登場しているので、新たな企画の作り手も、それでいいんだ、と勘違いし、何が新奇性か、面白いといえるのか、意外性ありといえるのか、をまったく検討することもなく、ただその時々の自分自身が表現できそうなことのみをまとめて、企画と称していたりします。
これは一面たいへんに嘆かわしいことでもありますが、だからこそ、ちゃんとした企画を手がけることによって、自分自身に大きなチャンスが巡ってくる可能性が高まっています。
また、世に「企画もどき」ばかりが跋扈しているという事実は、私たちが企画を手がける際の格好のサンプルが多種多少に存在しているという事実でもあり、このことは、これから企画作りに携わろうとしている方にとってはとても有利な環境と見ることもできます。
たとえば、ありきたりの企画もどきを目にしたら、それを「元ネタ」として、そのネタをどのようにアレンジしたら「新奇性あり」といえるのか?ということを試みるだけで、一気に自分自身の企画のコンセプトを立ち上げることも可能です。
そこに今度は実現可能性を検討していけば良いわけです。
このように、ゼロから何かを思いつかなくても、他人のサンプル(=元ネタ)を通して、思いついていけばよいわけですから、今ほど企画が作りやすい時代はないと思います。ぜひ、毎日思いついたことを検討してみてください。
日々思いついたことすべてを記録することは難しいですが、自分自身が「これって面白いかも?」と思ったことは忘れないはずです。必ずそれをメモに残してください。
毎日が難しかったら、週に一度くらいは、メモを眺めながら、新奇性や実現可能性を検討してみてください。
もし、ゼロからなかなか何かを思いつかないとき(←普通はそうです)は、(他人の)サンプルをネタ元として、そこに新奇性と実現可能性を掛け合わせてみてください。
ここまでやれば、1、2ケ月もすれば、ご自身の企画がおぼろげながら見えてくるはずです。
あとは、企画のコンセプトを固め、企画作りに突入するだけです。
その際大切なのは、常に「意外性」を意識して作業を進めるということです。これについて機会を改めて。